今回は Shawn Mendes の 『In My Blood』という曲を紹介します。
ショーン・メンデスと言えば、カナダ出身の若手シンガーで、今や「ポップ界のプリンス」と称され、全世界から注目されているアーティストです。
この曲は、若くしてデビューしたショーンが抱えていた「不安」をテーマにした曲です。興味のある方は最後まで見ていただけると幸いです^^
どんな曲?
若くして成功したショーンですが、実は彼「極度の不安」という精神状態に陥った時期があります。
「不安障害」という症状があり、これは「日常生活の中で心配ごとや恐怖心を慢性的に持ち続けてしまう心の状態」です。些細なことにも過敏に反応してしまい、本人が思う通りにコントロールできません。
芸能界という過酷な世界に、15歳という若さでデビューしたショーンにとって、そのストレスや不安は、計り知れないものだったはずです。
youtu.be
曲の歌詞には、不安に飲み込まれ、もう諦めようとしているショーンの苦悩が綴られています。でも、諦めるのは自分らしくないと葛藤している気持ちも歌詞に表れています。
この曲の魅力は、不安障害という心の病気と闘いながらも、自分らしく前向きに生きていこうとする彼のポジティブな気持ちに、聞いている人も勇気をもらうことができる点です。
和訳
[Intro]
Help me,
It's like the walls are caving in
Sometimes I feel like giving up
But I just can't
It isn't in my blood
助けてほしい
壁が崩れて窒息しそうだ
正直、諦めようかなって思ったりする
いや、でもダメだ
そんなの僕らしくない
[Verse 1]
Laying on the bathroom floor, feeling nothing
I'm overwhelmed and insecure, give me something
I could take to ease my mind slowly
Just have a drink and you'll feel better
Just take her home and you'll feel better
Keep telling me that it gets better
Does it ever?
バスルームに寝転んで、頭の中は空っぽで
疲れ果て、不安定な精神状態
こんな心を、ゆっくり癒してくれるものがあればなぁ
お酒を飲めば、気がまぎれる
あの子を家に誘えば、気が紛れる
それでいつか元に戻るって言い聞かせるけど
本当に直るの?
[Pre-Chorus]
Help me,
It's like the walls are caving in
Sometimes I feel like giving up
No medicine is strong enough
Someone help me
I'm crawling in my skin
Sometimes I feel like giving up
But I just can't
助けてほしい
壁が崩れてきているようだ
もう諦めようかな
僕に効く薬なんて存在しないし
誰か助けてくれ
身体中に震えが止まらない
もう諦めようかな
いや、でもダメだ
[Chorus]
It isn't in my blood
It isn't in my blood
そんなの僕らしくない
僕にそんな血は流れていない
[Verse 2]
I'm looking through my phone again feeling anxious
Afraid to be alone again, I hate this
I'm trying to find a way to chill, can't breathe, oh
Is there somebody who could...
不安に飲み込まれながら、また携帯を見て
ひとりぼっちが怖い、ああこんな自分が嫌だ
どうにか冷静を装うけど、ああ、苦しいよ
誰か、助けてくれ…
[Bridge]
I need somebody now
I need somebody now
Someone to help me out
I need somebody now
誰か、そばにいてくれ
誰か、頼むから…
助けてほしいんだ
誰か、そばにいてくれ
[Outro]
It isn't in my blood
I need somebody now
It isn't in my blood
I need somebody now
It isn't in my blood
そんなの僕らしくない
誰か、そばにいてくれ
そんなの僕じゃない
頼むから、誰か来てくれ
僕にそんな血は流れていないんだ
英語表現
In one's blood ~の血に流れている
「血液の中にある」という意味から転じて、「〔資質・性格が〕染みついている、親譲りである」という意味になります。
ここでは、「諦めたりするのは自分らしくない」という意味で、そんな弱気は自分の血に流れていないという意味になります。
これは日常的にもよく使う表現で、例えば何かミスをした際、「僕は野蛮な性格だから」と自分を卑下する時に"It's in my savage blood" と言ったりします。
Feel nothing 何も感じない
「何も感じない」から転じて、「頭の中は空っぽ」と訳しました。不安や恐怖に押しつぶされそうになって、無の感情でバスルームに寝ころんでいる状態が上手に表されています。
Overwhelmed 圧倒された、参った
"overwhelmed"は上の写真のように、自分の能力やキャパシティ以上のことを求められ、圧倒されてしまったという形容詞です。
ショーンは不安やプレッシャーという、自分では対処できないようなものと闘って、圧倒され、そして疲れ果てている状態を表しています。
Insecure 自信をなくした
"insecure" は "confident"(自信のある)の対となるような言葉です。
もともと"secure"(安全な、安心な)という言葉に、反対の言葉を表す接頭辞のinが付いて「不安な、自信をなくした」という意味になりました。
会話にもよく使われる言葉で、"I'm insecure about how I look today.."(今日の見た目に自信ないな…)というように使われます。
Ever 一体、本当に(強調語)
"ever"は何かを強調する際によく使われます。
例えば"Have to ever been to ~?"(〔今までに〕~へ行ったことはありますか?)というように、動詞を強調する際によく用いられます。
ここではお酒を飲んだり、女性とデートすることで、気分が良くなると言われているけれど「それって一体本当なの?(→そんな訳ないよね)」という協調(反語)として使われています。
Crawl in my skin 虫酸(むしず)が走る
本来、"make one's skin crawl"で「虫酸が走る」という意味で使われますが、ここでは"I'm crawling in my skin"(僕が虫酸を走らせている)と言っているので、自分自身を「虫酸」と例えて、全身に震えを送っているような感覚かと解釈しました。
ちなみにLinkin Parkが2000年に発表した"Crawling"という曲にもこの表現が使われています。
Anxious / 不安な
"anxious"は「漠然とした(具体性のない)未来への不安」を表す形容詞です。
ここでは「抽象的で、原因もわからないようなショーンの将来に対する漠然とした不安」を意味しています。
ちなみに似た言葉に"worried"(心配した)もありますが、こちらは「(具体的に)悪い予感がしている心配です。」
例えば"I'm worried about the test tomorrow."(明日のテストが心配だ…)のように、「テストで落第するかもしれない」という具体的な悪い予感がしているときに使われます。
おわりに
この曲をリリースした際に、ショーンは以下のような言葉を残しています。
This song is the closest song to my heart that I’ve ever written.
この曲は、今まで書いた曲の中で、僕の心の状態を最も素直に表したものだ。
芸能界という、世界中の人から良くも悪くも注目され、自分の人格や行動で、評判や売り上げが一気に変わる世界にいるショーンは、一般の人では想像もつかないくらい悩んでいたのだと思います。
しかしこの曲の通り、不安と向き合いながらも、前向きに生きていこうと決意し、新しい曲を次々リリースしたり、ファンとの交流も人一倍努力している姿が、最近のショーンのライブの様子や彼のSNSを見ていると伝わってきます。
人間生きていれば、どんな人でも不安に飲み込まれ、自分に自信が持てない状況に陥る時期があると思います。でもそんな時は、この曲を聴いて、ショーンの前向きな生き方に勇気をもらっていただけたら嬉しいです。