今回は「Love, サイモン 17歳の告白(英語名:Love, Simon)」を紹介します。
主人公はゲイの高校生で、彼の悩み、恋愛、そして成長を描いた作品です。
LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)の当事者、もしくは周りにLGBTの知り合いがいる方にはぜひ見ていただきたいです。
またアメリカの高校生活がリアルに描かれているので、アメリカの学生気分を味わいたい方にもおすすめです。
今回はサイモンの苦悩や成長を描いているシーンを解説していきます。
※※以下ネタばれを含みます。ご注意ください※※
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オススメする理由
- マイノリティの人たちの生活を垣間見れる
- LGBTの人への偏見がなくなる
- 当事者はカミングアウトの方法を学べる
- カミングアウトされた際、周りはどうすればいいのか学べる
この映画のポイントは、「サイモンは”超”普通な男の子で、なおかつゲイである」という点です。
通常ゲイというと、女性っぽくて、おしゃれに気を使い、スキンケアを欠かさない、というような連想する人も多いかと思います。
しかしサイモンは寡黙な性格で、落ち着いた口調、服装は「ザ・アメリカの男子高校生」、顔には少しニキビもあるという、なかなかゲイと結びつかないような男の子です。
サイモンは「普通」であるが故に、周りの目を気にしてしまい、なかなかカミングアウトができません。
つまりこの映画のメッセージは、「普通=異性愛者というわけではない。どんな人だってゲイかもしれないし、ストレートかもしれない。だから異性愛者が普通(基準)であるという考え方はやめよう。」となります。
目次
Summary / あらすじ
17歳の高校生サイモンは、どこにでもいるような普通の男の子ですが、自分がゲイであることを周囲に隠しています。
そんな彼が学校の掲示板で知り合った同じゲイの男の子「ブルー(ペンネーム)」と連絡を取り始め、彼に次第に惹かれていくところから物語は始まります。
しかし、ブルーとのメールのやり取りをある友達に知られてしまい、それを悪用されてしまう展開に。
次第に事は大きくなっていき、最終的に彼の友達や学校全体を巻き込むほどの大事件になっていきます。この事件を契機に、サイモンは自分のセクシュアリティと向き合うこととなり、次第に人として成長していきます。
Characters / 登場人物
Simon / サイモン
高校生最後の学年。演劇部に所属しているが、わき役。
自分の感情をあまり表に出さず、寡黙な性格。
13歳で自分がゲイであることに気が付くが、周りに言う勇気が出ずにいる。彼女がいたこともあるが、しっくりせず別れてしまった過去も。
自分の秘密を守るために大切な友人を騙してしまうというずる賢い面も。
良くも悪くも本当に普通な男の子。
Leah / リア
サイモンの幼稚園からの幼馴染。性格は落ち着いていて、サイモン曰く「学校一クールな存在。」
ある人に長い間片思いしていると告白するが、実はその相手はサイモン。
Abby / アビー
サイモンと同じ演劇部に所属。少し前に転校してきたばかりだが、サイモンたちと仲良くなる。明るい性格で、男子から人気。ニックのことが気になっている。
普段は表には出さないが、両親が離婚したことで悩んでいる。
サイモンが最初にカミングアウトする相手。
Nick / ニック
リアと同じくサイモンの幼稚園からの幼馴染。アビーに片思いしている。
Bram / ブラム
サイモンの友人。社交的な性格。サイモンのメール相手「ブルー」の正体。
サイモンが最初にブルーだと疑うが、パーティーで女の子とキスをしているところを目撃したため、候補から外れる。
しかし物語の最後で本当は自分がブルーであることを告白し、サイモンと結ばれる。
女の子とキスしたのは、パーティーで酔っていて訳が分からない状態だったため。
ユダヤ系で、黒人で、同性愛者という性的マイノリティのコミュニティの中でも少数派
というバックグラウンドがあるため、カミングアウトに関してかなり臆病になっていた。
Martin / マーティン
サイモンの演劇部の仲間。アビーのことが好き。サイモンのメールを発見し、自分とアビーの仲を取り持つようにサイモンに頼み、「できなければメールを流出させる」とサイモンを脅す。
Ethan / イーサン
サイモンと同じ高校に通うゲイの男の子。服装やしぐさ、しゃべり方が女性っぽい。
「世間一般がゲイと聞いて連想する男の子」として登場し、「普通な」サイモンと対照的な存在。時々いじめられているが、気にしていない。
両親にはカミングアウトしているが、高齢で宗教的な祖父母の前では、異性愛者であることを貫いている。
Cal / カル
サイモンの演劇部の伴奏を担当。サイモンのブルー候補の一人。
Lyle / ライル
サイモンたちの行きつけのワッフルハウスのウェイター。ブルー候補の一人。
Emily / エミリー(サイモンの母親)
セラピストで、息子想いの母親。
ここ数年の息子の様子に疑問を感じており、何か秘密があるのではと思っている。
息子のカミングアウトを受けてもすぐに理解し、自分らしくいてほしいという思いを告げる。
Jack / ジャック(サイモンの父親)
ジョーク好きな父親。息子のカミングアウトを受け、最初こそ戸惑うが、次第に彼の長年抱えていた悩みに気づけなかったことを悔やみ始める。
自分の何気ない冗談が息子を傷つけていたことにも気づき、謝る。
Nora / ノラ(サイモンの妹)
料理人になることを夢見ている、兄想いの妹。
兄がゲイということに最初は驚くも、兄を支える。
Quotes / 各シーンからの引用
サイモンの自己紹介
I'm just like you. For the most part, my life is totally normal.
僕はありきたりな人間だ。僕の人生は「超」普通な面が大部分を占める。My dad was the annoyingly handsome quarterback who married the hot valedictorian.
父は腹が立つほどイケメンなクォーターバックで、イケてる優等生の母と結婚した。I have a sister I actually like. Not that I'd ever tell her that.
妹もいて、本当は好きなんだけど、普段はそんなこと絶対に口にしない。
And then there's my friends.
それから僕の友達。I have a totally, perfectly normal life.
全く、完璧と言ってもいいほど普通な生活を送っている。Except I have one huge-ass secret.
でも、超ド級の秘密が1つあるんだ。
自己紹介からもわかるように、サイモンは特段変わったところのない、ごく普通な高校生ですね。
しかし、だからこそ「ゲイであることを受け入れ、周りの人に伝える」という、良くも悪くも目立ってしまう行為に抵抗があります。
ゲイであることを認めてしまったら、世界が一変してしまうかもしれない。加えて周りの人たちの関係も壊れてしまうかもしれない、という言葉では表せないくらいの恐怖を抱いています。
普通のサイモンがどうやって自分らしく生きられる方法を見つけていくかがこの映画の見所です。
ゲイとしての苦悩
サイモンがゲイであることを告白できない要因が描かれている描写がいくつか登場します。そんなサイモンの苦悩が伝わるシーンをいくつか紹介するので、もし今同じようなことをしている人がいたら、自分の行動や言動を見直していただきたいです。
学校でゲイの子がいじめられている
ゲイのイーサンがいじめっ子にからかわれているシーンが何度かあります。
ことあるごとにイーサンをからかう2人組が登場し、サイモンはそれを横から見ています。
彼らはイーサンがスカーフを付けていたら、女みたいなファッションだとバカにし、イーサンがフットボールの試合を観戦していたら、男を見定めるために来たなど、失礼な言動を繰り返します。
それを見ているサイモンは、自分もカミングアウトしたら同じようにからかわれるかと思い、躊躇してしまう要因となります。
ゲイというだけで偏見を持ったり、差別することはいつの時代、そしてどんな場所でも絶対にしてはいけません。
父親の冗談に傷つく
サイモンの父親はジョークが大好き。冗談を言って家族を笑わせようとしますが、中にはサイモンを傷つけてしまうジョークも。
例えば家族で映画を見ていて、「あの男、ゲイっぽいな」などと言って、ゲイの人をバカにしているような発言をしてしまいます。
加えてサイモンがゲイであることをカミングアウトした際、「昔付き合ってた女がトラウマでゲイになったか?」など無神経な発言をしてしまい、サイモンとの間に溝ができてしまいます。
サイモンは生まれつき男の人が好きなセクシュアリティのため、この発言は的を得ておらず、しかもこのようなセンシティブな内容を話している際に、冗談を言うのはとても不謹慎です。
その後、父はちゃんと謝り、サイモンを和解しますが、このような何気ない発言、冗談は、時にLGBTの方を深く傷つけてしまうことがあることを、周りの方は覚えておくべきです。
悩み、自分を受け入れ、成長するサイモン
なんでゲイの人だけがカミングアウトしなくてはいけないの?
サイモンは長い間、異性愛者の人と違って、
どうしてゲイの人達だけがカミングアウトしなくてはいけないのだろうと悩んできました。
It doesn't seem fair that only gay people have to come out.
Why is straight the default?
ゲイの人達だけがカミングアウトしなくてはいけないのは不公平だ。
どうしてストレートが基準になっているんだ?
ストレートの友達はカミングアウトせずに生きていけるのに…といって、親友たちが親に「私は異性愛者だ」と告白しているシーンがIrony(皮肉)として挿入されています。
この疑問はLGBTというマイノリティに属している方は一度は思ったことがあるのではないでしょうか。
残念ながら現在の社会では、ゲイの方は少数派として扱われるため、どうしてもカミングアウトという形で自分の存在を主張し、認めてもらわなければいけません。
サイモンは「普通」であるが故に、この行為に抵抗があり、なかなか前に進めません。
しかし、ブルーという自分と同じ境遇にいる人と出会い、少しずつ自信や勇気を手に入れます。
今まで誰にも打ち明けられず、ひとりで抱えてきた悩みを共有できる仲間に出会えたことはサイモンにとってとても大きな出来事です。
これをきっかけに親友のアビーにカミングアウトする勇気を手にします。
学校全体にゲイだと暴露される
少しずつゲイである自分を受け入れ、成長していたサイモンですが、「アビーと付き合うように仕向けなかったら、ゲイであることを暴露する」とサイモンを脅し続けてきたマーティンがアビーへの告白に失敗し、なんとその腹いせにサイモンがゲイであることを学校の掲示板に書き込んでしまいます。
加えて親友も、アビーとマーティンをくっつけるためにサイモンが彼らを騙してきたということで怒り、絶交されてしまいます。
さらに悪いことに、メールの相手のブルーも、自分も学校で噂になることを恐れ、サイモンとのメールのやり取りをやめてしまいます。まさにどん底まで突き落とされたサイモン。
その時の彼の表情がものすごくリアルなので、共有します。
今までひた隠しにしてきた自分のセクシュアリティを、他人から世の中に暴露されてしまうことはゲイの人にとってとてもつらく、悲しく、世界が一変していまうことです。
カミングアウトのタイミングは当事者本人が、いつ、どこで、誰にするか決めるもので、他人にその権限はありません。
暴露してしまったマーティンに対するサイモンの心の叫びを紹介します。
Look, you don't get to decide that, Martin.
マーティン、お前が勝手に決めちゃダメだろ。I'm supposed to be the one that decides when and where, and how and who knows and how I get to say it.
いつ、どこで、そしてどうやって、誰に、どのようにして言うかを決めるのはこの僕だっ!That's supposed to be my thing!
僕の問題だ!And you took that away from me.
なのにお前はそれを僕から奪った!
少しずつ成長していくサイモン
母の言葉
友人を失い、ブルーにも見捨てられ、そして学校ではサイモンの噂が溢れている最中ですが、家族の支えで少しずつ成長していきます。
カミングアウト後のサイモンの母の言葉が勇気をもらえるので、紹介します。
I need you to hear this.
聞いてちょうだい。You are still you, Simon.
あなたはあなたのままよ、サイモン。But you get to exhale now, Simon.
もう自分の気持ちを吐き出しなさい、サイモン。You get to be more you than you have been... in a very long time.
あなたはこれまで以上にあなたらしくなればいいの。You deserve everything you want.
あなたにはあなたの望むもの、全て手に入れる権利があるわ。
世界が一変したと思い込んでいたサイモンですが、この母の言葉で、ゲイだとしても何も変わらない、そしてこれからは今まで以上に自分らしく生きていいんだと自信を得ることができます。
自分の口からカミングアウト
家族や、そして友人のリアから勇気をもらったサイモンは、掲示板で全校生徒に宛ててメッセージを書きます。
Dear students of Creekwood High School,
クリークウッド高校の生徒の皆さん、
...the message is true. I am... gay.
(中略)…あの書き込みは正しい。僕は…ゲイなんだ。
It was unfair that only gay people had to come out. I was sick of change.
ゲイの人だけがカミングアウトするのは不公平とか、変化が嫌いとか御託を並べてきたけど、
But the truth is I was just scared.
でも正直なところは、ただ怖かっただけなんだ。
because what if the world doesn't like you?
だって、もし嫌われてしまったらどうする?
So, I did whatever I could to keep my secret.
だから、自分の秘密を守るために何でもした。
I am done being scared.
もう怖がるのはやめた。
I'm done living in a world where I don't get to be who I am.
自分らしく生きれない世界に住み続けることも。
I deserve a great love story.
僕には素敵な恋をする権利がある。
サイモンは勇気を振り絞り、きちんと自分の口からカミングアウトをします。
変わることを恐れていたサイモンにとって、このようにして学校全体に本当の自分を発信することは、ものすごく怖くて、勇気のいることです。
変わることを決意し、実行に移すことのできたサイモンの行動は、賞賛されるべきです。
強くなったサイモンとブルーが結ばれる瞬間
成長し、大人になったサイモンは、自分の演劇の発表会の後、遊園地の観覧車に来てほしいと片思いしているブルーに伝えます。
サイモンとアビーたちは観覧車でブルーを待ちますが、なかなか現れません。
誰もが諦めかけた瞬間、サイモンたちの友人ブラムが登場し、彼がブルーだとサイモンに告げます。
下記がブラムが現れた際の彼らのやり取りです。
Simon: I didn't think you'd come.
Bram: Me neither. Until I was walking towards you, I didn't think I had it in me.
サイモン:来ないかと思ったよ。
ブラム:僕も。君のところに歩いてくるまで、自分にこんな勇気があるなんて思わなかった。
ブラムはユダヤ系で、黒人で、そしてゲイであるため、
自分がかなりぶっ飛んだ存在だと話します。
ゲイの人の中でも少数派に分類されるため、
本当の自分を見せるのが怖かったのでしょう。
観覧車の前には多くの人がサイモンの様子を見物していたため、
そのような状況下で本当の自分の姿を現すことはとても怖いことです。
そこで登場する決意をしたブラムの勇気も高く評価されるべきです。
ユダヤ教徒やキリスト教徒の中には未だに「同性愛は神の意に反する」という、
古く、間違った考え方を持った人が存在します。
加えて、黒人の方に対しても、未だに根強い差別や偏見が存在します。
この3重の苦悩を体験してきたブラムも、サイモンの勇気に魅せられ、
自分ももっと前向きになろうと決意しました。
勇敢な2人は結ばれ、友人たちと楽しそうにドライブしているシーンで物語は終わります。
おわりに
この映画のテーマはLGBTについてですが、中でも特に「サイモンの普通さ」が見所となっています。
この映画を見て、「こんな普通そうな男の子でもゲイである場合があるんだ…」という
発見をした人も多いのではないでしょうか。
LGBTと言うだけで、偏った見方をしてしまう人は是非この映画を見て、
ゲイの人たちも自分たちと何も変わらないんだと理解していただきたいです。
自分の知らない人たちのことを理解しようとする行動が、
より良い社会を作り出す第一歩だと思います。
加えてまだカミングアウトできずに悩んでいる方も、
この映画を見て、サイモンから勇気と自信をもらってください。
なぜなら、サイモンも言っている通り、"You deserve a great love story."(あなたには素敵な恋をする権利がある。)